2025/07/02 22:02

現代日本人の鉄不足は、深刻かつ慢性的な社会問題です。鉄不足は「貧血」という狭い枠組みだけで捉えられがちですが、実際にはエネルギー代謝、免疫、神経、内分泌、精神、全身の恒常性そのものに深刻な影響を及ぼします。鉄不足は体内をカオス状態にしてしまいます。



鉄不足が慢性化することで生じる症状と疾患一覧【①〜⑤/⑨】


【① エネルギー代謝系の障害】

症状:メカニズム
慢性疲労:ミトコンドリアの電子伝達系停止によるATP不足
筋力低下:骨格筋での酸素供給とATP産生低下
持久力低下:有酸素運動能力の大幅な低下
冷え性:熱産生低下(ミトコンドリア機能障害)+末梢血流不良

【② 神経・精神系の障害】

症状:メカニズム
不安感・抑うつ:ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン合成低下(鉄依存酵素)
頭痛・偏頭痛:脳内酸素供給不足+血管調節障害
集中力低下:前頭前野のATP不足+神経伝達異常
記憶力低下:神経栄養因子の産生低下+ミエリン鞘合成障害
睡眠障害:メラトニン合成低下(鉄依存)+レストレスレッグ症候群(むずむず脚症候群)

【③ 免疫系の障害】

症状:メカニズム
感染症リスク上昇:好中球・マクロファージ・NK細胞のATP不足+機能低下
ウイルス再活性化:ヘルペス、帯状疱疹などが再発しやすい
慢性炎症:ROS(活性酸素)増大→炎症体活性化

【④ 循環器・心血管系の障害】

症状:メカニズム
動悸・息切れ:心筋ATP不足+酸素運搬能低下
起立性低血圧:自律神経機能障害+血管収縮力低下
心不全:心筋ミトコンドリア障害によるポンプ機能低下

【⑤ 内分泌・ホルモン系の障害】

症状:メカニズム
甲状腺機能低下症:ヨウ素酸化酵素(TPO)は鉄依存酵素
副腎疲労:コルチゾール合成のエネルギー不足+酵素障害
性ホルモン低下:エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン合成障害

✔️ 鉄不足の本質的な特徴

  • 「酸素運搬」だけでなく、
    「エネルギー代謝」「神経伝達」「免疫」「ホルモン」すべてに関与する生命金属
    → 全身症状の多発が特徴

    ➡︎ つまり、鉄不足になると体内環境は、あちこちで大混乱を引き起こしています。


    次回は、今回と同じテーマの後半です。

    鉄不足が慢性化することで生じる症状と疾患一覧【⑥〜⑨/⑨】

    をお届けいたします。